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2017年8月 3日 (木)

歌麿の肉筆画大作「雪月花」

土曜日にわざわざ箱根の岡田美術館まで、この三部作(品川の月だけ実物大の複製)を見に行ってきた。備忘録も兼ねて、もう少し書いておきたい。

Utamaro_leaf

 

美人画で有名な歌麿の肉筆画はそもそも40数点しか現存しないといわれている。中でも、この三部作は横3m以上、縦2mあるという、浮世絵としては別格の大きさを誇る大作だ。

また3点とも海外に渡り、うち「深川の雪」だけが日本に買い戻されたが、1948年銀座松坂屋で公開されたのを最後に、長い間行方不明となっていた。その後再発見、鑑定の結果、本物であると判明し、岡田美術館が購入したもの。2014年に66年ぶりに一般公開された。(残念ながら、この時はきまま仙人は見ていない。)という曰く付き。

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                深川の雪

ちなみに三部作の「品川の月」は米国のフリーア美術館(ワシントンD.C.)、「吉原の花」は米国のワズワース・アセーニアム美術館(コネチカット州)にある。

Utamarohana

               吉原の花

「品川の月」はフリーア美術館設立者フリーアの遺言で門外不出(他作品の持ち込みも禁止とか)となっている。意図はあるのだろうが迷惑な縛りがあり、日本での三部作勢揃いは実現しなかった。この展覧会に先立ち、フリーア美術館に地下通路でつながって隣接しているアーサー・M・サックラー・ギャラリー(サックラー美術館)にて138年ぶりの三部作勢揃いが実現したようだ。サックラー美術館は、地下通路でつながっていることからフリーア美術館の館内とみなせるという拡大解釈が取られたらしい。

Utamarotsuki

                品川の月

こういった経緯があり、品川の月だけ実物大の複製となったようだ。品川の月の実物を見ていないので、何とも言えないが、(気になる点もないわけではなかったが、)複製画でも十分三部を比較して楽しめる。

きまま仙人は、思ったよりも快調にほぼ開館の9時くらいに着いたが、真っ先にこの三部作を見に行った。朝一だとお客さん3人くらい(初めは2人)でかぶりつき状態。

まず、三部とも細部にわたって非常に細かく、丁寧に書かれている。バベルの塔ではないが、細部までじっくり見ていく楽しみがある。個々の人、場面にショートストーリーが描かれているようだ。次に品川の旅籠屋、吉原の引手茶屋、深川の料亭の文化の違いも面白い。たとえば化粧の紅が違うことや、「吉原の花」の花笠踊り、寝具を運ぶ女中などだ。

修復の関係もあるのだろうが、一番色自体が鮮やかなのは「深川の雪」だ。人のバランス的にも程よく、見栄えがする。上下に描かれた雲が日本画らしい独特の装飾性を出している。
「吉原の花」は何といっても一番華やか。ただ52人という人数は、多作に比べ人が少し小さくごちゃごちゃした感がある。それが面白みでもある。横幅が他の2作品より少し短い分、余計に詰まった感じがするのかも。
「品川の月」は品川の海が沖まで見渡せ、横長の画面で左右と奥行きの広がりを感じる作品になっている。複製画のせいか修復のせいかはわからないが、色は一番地味。また紙を継いだところの横線が少し気になるといえば気になる。

また、子供や動物などはいるが、男性(特に客)がひとりも描かれていない。唯一「品川の月」に障子に男性客と思われる影が映っている。これはこれで意味深だ。

少し違和感があったのは(逆に面白みでもある気がする)、遠近法に若干おかしなところがある点だ。普通に見ていてもそうは感じないが、細部までよく見ていくとこれはおかしいぞと思うところが何か所かある。(特に「品川の月」)

もうひとつだけ岡田美術館について触れておこう。今回はこの三部作(のうち2つ)が目的で行ったのだが、岡田美術館の収蔵品自体も素晴らしい。点数も多いので、きまま仙人は疲れてきて、絵画中心に後半は休憩を入れて流すように見て回った。「深川の雪」以外にも歌麿の肉筆画があったし、抱一、其一、雪佳、雅邦、古径、大観、観山、春草、御舟、深水、松園、清方、玉堂、、、、著名な画家の作品がほとんどある。

きまま仙人は焼物はよくわからないが、汝窯のものまであった。少し別格の展示がされていたとはいえ、色を見て台湾の故宮博物館で見たもの?とすぐに目に留まった。焼物については質・量ともに凄いコレクションなのだろうと思う。

東京からだと交通費もかかるし、大人2,800円は正直安くはない。が、東京の美術館に比べると、ひとも少なく、ゆっくり美術品と向き合える美術館だと思う。足湯があるのもいい。

また、訪れたいと思う美術館だった。

 

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