« ルノワール展 | トップページ | 出勤前に洗濯 »

2016年6月 7日 (火)

奇想の図譜 辻惟雄著

歴史的名著といわれる「奇想の系譜」に続いて、その続編にあたる本書「奇想の図譜」を読んだ。辻氏らしい解釈、説明で面白かったが、「奇想の系譜」に比べると、やや難解な部分も多かったかな。

1616_kisounozufu

 

はじめに目次を書いておこう。

Ⅰ 自在なる趣向
北斎のワニザメ
波の変幻
浮世の眺め-舟木家本「洛中洛外図」
「からくり」のからくり
Ⅱ アマチュアリズムの想像力
若冲という「不思議の国」-「動植綵絵」をめぐって
稚拙の迫力-白隠の禅画
写楽は見つかるか?-ある架空の問答
Ⅲ 「かざり」の奇想

あとがき
文庫版あとがき
解説 イメージの源泉(池内 紀)

続編といいながら、「系譜」が1970年出版、「図譜」が1989年出版なので、かなり時間差がある。

正直「系譜」の方は、画家6人を順に解説していたので、話はすごくまとまっていて、わかりやすかった。そして「奇想」というキーワードで串刺しにされていた印象。が、この「図譜」は「系譜」で書き足らなかったことを、とにかくあれこれと盛り込んだという感じ。写楽に関する部分では、年齢不詳の美術史家とその友人の美術ジャーナリストを登場させ、対談形式で書かれているという捻った書き方。

北斎や若冲は、実は西洋や大陸から入ってきたものをいろいろ見ていたんですね。だからといって彼らのオリジナリティが損なわれるものではありませんが。ただ彼らの表現方法について、そういう発想に至ったきっかけについて、少し理解できた気がします。

また辻氏のいう「奇想」という概念が、いっそうよく理解できたように思います。日本人はもともと奇をてらう、ある種派手な文化、嗜好を持っていたのだと理解できました。中でもかざり~風流~婆佐羅~見立て、などの日本文化そのものについての考察など、ある意味(日本)美術の枠を超えて興味深かった。きまま仙人など、考えてみたこともなかったようなことも多かったし、見識がなく難解だった部分も多かったが。風流という言葉は、現代とかなり違う意味だったんですね。

欲をいうともう少し作品はカラーで掲載してほしかったとは思う。が、文庫本で1,512円という値段を考えると致し方ないか。

 

|

« ルノワール展 | トップページ | 出勤前に洗濯 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 奇想の図譜 辻惟雄著:

« ルノワール展 | トップページ | 出勤前に洗濯 »