生誕三百年 若冲と蕪村展
若冲と蕪村が同い年だったなんて言うのは、意外というかまったく知らなかった。ただ晩年は同じ京都、それも比較的近くに住んでいながら交友の記録がないというのも面白い。ただ円山応挙や池大雅ら、著名画家、文人らと交友はそれぞれあったようなので、面識はあったのだろう。以外に仲が悪かったのだったりして、、、
やはり興味があったのは、若冲の方。きまま仙人もどちらかというと、2000年以降の若冲ブーム後見るようになった(そもそも日本画自体以前はそれほど見なかった)。若冲をこれだけまとまった点数見るのは初めてだ。蕪村については、まして、である。
若冲について、今さらきまま仙人が語ることはないだろう。今回さまざまな種類の絵を見ることができ、改めて若冲の面白さを感じる。印象に残ったものは、何といっても色鮮やかな極彩色の花鳥画。裕福であり、いい絵具を使っていることもあり、色鮮やかで厚みのようなものを感じる。また描写が細かい。
技術的にもいろんな試みがされている。筋目描き、拓版画などなど。京友禅のぼかしの技術も応用しているとのことだし、(今回なかったが)有名な桝目描きは西陣織の下図「正絵」を参考にしたのではないかと言われている。背景が真っ黒な合羽摺着色の木版画(若冲下絵)もインパクトがあってすごくよかった。
合羽摺着色の花鳥版画、「櫟に鸚哥図」
一方で、野菜の「蔬菜図押絵貼屏風」や「象と鯨図屏風」などは、とてもユーモラス。またデザイン的なセンスも新しさすら感じる。おそらく象も鯨も実物を見たことがないのだろう。非常に奇妙な面白さがある。たとえば、「象と鯨図屏風」(下)の白象の三日月型の目やゆで卵を2つに切った断面のような耳、縦線の入った牙、、、
あと、面白かったのは、若冲も蕪村も琳派や中国南頻派の絵、沈南頻やその流れを汲む鶴亭などの絵、朝鮮の絵などを参考にして描いている(勉強している)こと。元の絵にも似ているし、若冲と蕪村どちらが書いたかわからないような、非常によく似た作品も多々あった。
何点か挙げておくと、野菜でかかれた涅槃図「果蔬涅槃図」。実家が青物問屋だったこともあり、大根を釈迦にするなんていうユーモアにニンマリさせられる。
中央の大根が釈迦
次に「乗興舟」。拓版画にぼかしの入った、これまた独特の作品。こういう試みがまさに若冲らしい。できれば実際の版木もみたかった。(4/22から展示予定)
ネガのような反転表現が面白い拓版画の「乗興舟」。
蕪村についてもひと言。俳人としての方が有名だが、絵のセンスも抜群だし、山水画などしっかりした技術を持った画家でもあったことが改めて感じられる。でもきまま仙人としては、山水画よりも、大胆な筆使いで、一気に書いたような花鳥画やユーモラスな作品の方が面白かった。
「鳶・鴉図」は蕪村の作品の中でも、ひと際存在感があった。さすがに重要文化財。
蕪村 「鳶・鴉図」
「山水図屏風」は屏風ということでサイズも大きく、迫力ある構成。そのなかで、人や家屋、橋など細かく書かれているところも面白い。
92年ぶりに昨年見つかったという「蜀桟道図」(下)もそう聞くとぜひ見ておきたいと思う。
若冲も蕪村もかなりたっぷり見ることができた。しかも会期中かなりの絵が入れ替えられる、または場面替えされる。今回展示されていなかった桝目描きの「白象群獣図」や「乗興舟」の版木、重要文化財の蕪村の「富嶽列松図」なども見たい。
もう一度行ってもよさそうなくらいだ。
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