<ギィ・セモン白熱教室>第2弾 参加してきました
この手の技術色の強い時計イベントは久しぶりの参加。第1弾の時は参加できなかったので、楽しみにしていた。場所はアーク森ビルの37階、あいにく小雨だったが、いい雰囲気だった。
タグ・ホイヤーの副社長でサイエンス&エンジニアリング担当としてR&D部門を率いるギィ・セモン氏と、時計ジャーナリストのギスベルト・ブルーナー氏、そしてお馴染み広田雅将氏が司会進行というトークイベント。
ギィ・セモン氏はエンジニアだけあって話し出すと熱い。ブルーナー氏とのやり取りも、どんどん盛り上がっていくと広田さんが仕切るのが大変そうになるほど。通訳の方も大変そうだった。内容的にもまずまずわかりやすく、きまま仙人のようなムーブメント好きの時計愛好家には、非常に楽しいイベントdでした。タグ・ホイヤーさんクロノスさん感謝です。
熱弁するギィ・セモン氏
ギィ・セモン氏は物理やエンジニアリング科学が専門のようで、航空関連業界で活躍していた人のようで、時計業界の人ではない点がユニークで、またそれゆえの発想でV4から始まるこの10年の技術開発なのがよくわかった。今までの固定概念に縛られることなく、数学と物理学とマテリアルサイエンスで、時計を進化させていくという考え方は、(きまま仙人も技術屋として)すごく理解できるし、正しい方向なのだと感じる。商業主義的な印象もあったが、この10年の成果を改めて説明されるとすごい。
一方で、今の時計技術の古くて新しい課題というか、時計好き、ユーザー、マニアとして、技術をどう評価していくのかは難しいと感じた。ギィ・セモン氏も機械式時計の価値について、"エモーショナル"という言葉を使っていた。技術者が公の場でこう言い切ってくれると、非常に好感が持てる。一方、技術的分野において "エモーショナル"の評価は難しい。
例をあげると、ホイヤーの「マイクロトゥールビヨンズ」はクロノメータ認定のトゥールビヨンだ。ブルーナー氏によるとトゥールビヨンのうち95%はクロノメータ認定を受けておらず、それだけトゥールビヨンのクロノメータは難しいとのこと。クロノメータが精度の認定である以上、(少なくとも腕時計の)トゥールビヨンは精度上ほとんど意味のない機構だ。つまりトゥールビヨンは商業上のために必要な機能と言い切っていい。きまま仙人がトゥールビヨンをあまり評価しないのもこの点だ。
マイクロトゥールビヨンズ
"エモーショナル"ということでは、逆に動力部に電池を使っていたとしても、"エモーショナル"な時計はつくれるだろう。「機械式時計」の定義から始めなければならなくなりそうだが、、、
タグ・ホイヤーのV4(ベルト駆動ムーブ)から始まる新技術の時計、マイクロタイマー フライング 1000で1/1000秒計測可能なクロノ、そしてマイクロガーダーではヒゲゼンマイとテンワで構成されるテンプ自体を廃し、まったく新しい調速機構である線形振動子を開発した。V4やマイクロタイマーは多分に商業的な匂いも感じたが、マイクロガーダーの線形振動子にはある意味感動を覚えた。たしかに正しい方向の"エモーショナル"だと思う。
ベルト駆動のV4
カレラマイクログラフ 1/100秒計測可モデル
もうひとつギィ・セモン氏の話の中で、今後に期待できそうだったのが新素材。シリコン コンポジット(複合材料)と言っていた。(約束できないが、)来年には何か発表できるだろうというようなことを言っていた。期待して待ちたい。
あとマイクロガーダーの線形振動子で、時刻表示用の調速もできるようになると、完全に機械式時計が一世代進化したといえると思うのだけど。普通の機械式腕時計からヒゲゼンマイとテンワがなくなったら。。。
書きたいことはまだまだまだまだあるが、今回はこのへんで。また、タグ・ホイヤーのみならず、他のブランドもまだまだ頑張ってもらいたい。
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