時計コレクション (92) Longines Chronograph (Cal.13ZN) Part2
今回は搭載されているムーブメント、名機Longines Cal.13ZNについて語ろう。13ZNは、後継機の30CHとともにマニア憧れの名ムーブメントだ。 今ヴィンテージ(or アンティーク)クロノグラフと呼ばれるものの中で、パテックなど雲上ブランドのスペシャル品やスプリットセコンドなどの超複雑時計を除き、当時一般市販品最高のクロノグラフだと言っていいだろう。
このCal.13ZNは、5振動/秒(18,000振動/時)、17石、コラムホイール式、チラネジテンプ、ブレゲヒゲのヒゲゼンマイ、耐震機構なし、秒針規正機構なし。ドライビングホイールが4番車の出車ではなく、同軸に取り付けられた上にブリッジで保持されている。しかも軸受石まで入っている。これはエクセルシオパークなどごく一部のムーブメントにしかないものだ。リセットハンマーなどの各パーツもしっかりとした作りで、軸受石も他社のムーブメントに比べ非常に大きい。非常に堅牢な作りが特徴だ。
また何と言っても仕上げが美しい。特にこの時計の金梨地仕上げ(粒金仕上)の輝きが最高。各パーツの磨きや面取り等の仕上げもすばらしい。設計、仕上げともに人気があるのもうなずける。ムーブの仕上げの差は異なるものが多数ある。この1本のように金梨地仕上げのものも美しいが、他のものもブリッジ等にコードジュネーブ、地板にペルラージュを施すなど、素晴らし仕上げのものが多い。
クロノ機構はピラーホイール(8柱)、キャリングアーム伝達方式(水平クラッチ)、スライディングギア。30CHとは違い、13ZNはバルジューなどと基本的な構造は近い。フライバック機構がついているのが大きな特徴。パイロットが容易にリセットするためや、大砲を等間隔で撃つ時などに使われたと有る。 リセットしたあと、ハンマーはハートカムを押さえたままではなく、跳ね上がる。スタートボタンの軽さに対して、リセットがやや重めなのが特徴的だ。
13ZNには前期型、後期型と呼ばれる2種があるように書かれているものが多い。だが、どう分けるのか?(製造年、仕様?)や違いについては明確にはわからない。一説によると、18石(前期)か17石(後期)とされているものもあるが、定かではない。きまま仙人が調べた範囲、あるいは「Longines Watches」や「オンリー・アンティークス」に載っている限りでは、18石の13ZNは見つからないのだが。また前期型が金梨地仕上げで、後期はシルバー地のままという説もあるが、こちらはまったく正しくない。
前後期型かどうかはわからないが、上記などの資料によると、13ZNにはいくつかのバリエーションがある。まず初期には13ZNの大きな特徴であるドライビングホイールの受けのないものがある。もうひとつ1946年には3時位置のインダイヤルが12時間積算計で、センター同軸に60分積算計が付いた高級モデルが登場する。13ZNのみのモデルで、後継の30CHには無い希少な仕様だ。
Longines Watchesにあるレアモデル
ちなみに以下が後継機の30CH。テンプ・ピラーホイール位置が上下逆になっている点や、カップリングホイールがピラーホイール側からテンプ側に移っていること、耐震装置が付いたことなど、大きく変更されている。13ZNの方がオーソドックスな設計ではある。ただ堅牢さと仕上げの美しさ、その物作りの姿勢についてはいささかも変わっていないと思う。13ZNと30CH、ロンジンのこの2つの名機は、ロンジンのみならず、腕時計クロノグラフの歴史に残る名機であることは間違いない。ちなみに13ZNの開発が1936年、30CHの開発は1947年とされている。13ZNはせいぜい10数年の製造期間しかないということもあり、30CHよりも希少性も高いといえる。
13ZNの後継機、30CH
きまま仙人が13ZNを評価する理由は、第一に設計・仕様のレベルの高さ、特に堅牢さ。第二に何といってもその仕上げの美しさにある。仕上げに関しては、製品によってさまざまであるとはいえ素晴らしいものが多い。中でも金梨地仕上げの13ZNはほれぼれするほど美しい。 もうひとつ(第三に)理由をあげるとすると、ロンジンがマニファクチュールで他社にはムーブメントを提供していないということだ。数的に希少性も高いし、ケースや文字盤にいたるまで、すべてがロンジンの高い品質基準で出荷されている。
と、いうことかな。
きまま仙人は、この2本(2つのムーブ、いやそれ以外の時計も含めて、、、)を飽きもせず眺めながら、ゆっくりブラックコーヒーを飲むのが大好きだなぁ。。。
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