時計コレクション (番外57) 腕時計の世紀 (ワールド・ムック) 河村喜代子著
今日紹介するのは、河村喜代子さんという方(すみません、きまま仙人はまったく知らない人です。)がかかれた、ムック本だ。部分的には、少しかったるいが、過去の資料などもいろいろ掲載されていて、絵や写真を含めてなかなか参考になる本だった。
この本は、『デザインがわかる』(ワールドフォトプレス刊)で連載されたシリーズを一冊にまとめると同時に、 腕時計のデザインを串刺しする「視認性を構築するデザイン」を収録したムック本とのこと。
構成は5章立てで、
1.リストウオッチ ポケットを出た時計
2.ミリタリーウオッチ 戦場に出た腕時計
3.ダイバーズウオッチ 水に入った腕時計
4.エレキウオッチ 電気じかけの腕時計
5.視認性を構築する ダイヤル・デザイン
参考図書
あとがき
5章が少し毛色が違うが、それぞれについて、当時の広告や写真を織り交ぜながら説明が加えられていく。内容的には、知っていることも多かったが、資料に基づいて書かれているのがいい。たとえば、懐中時計を腕に巻くリストバンドも写真や広告からいろいろなタイプ、特徴が説明されている。
きまま仙人もNo.91で紹介したMoerisの懐中時計を腕にしてみたいと思ったが、ネットで探してもさすがに現在購入できるものは見つからなかった。
また2章では、実際に多くの軍人がハック機能により、時間を合わしているところの写真がある。話としては知っていても、写真が伝えるものは文字以上にリアルだ。きまま仙人は特にミリタリー好きというわけではないが、軍事用に発達した技術があるのもたしかで、エピソードも多い。
タイプXX(20)というのは、ブレゲのモデル名としてよく知っていたが、もともとはフランス軍が出した購入仕様だったんですね。
3章のダイバーズウォッチ、有名なロレックスのオイスターケースの物語(英仏海峡横断時使用)も掲載。
ハミルトンが世界で初めて電池式腕時計「ベンチュラ」を販売したことは有名だが、ムーブの写真や図などは、今まであまり見る機会がなかった。シチズンの電波(腕)時計など、機械式ではない時計の歴史がつづられている。まぁ機械式時計のマニアからすると、興味としてはやや薄いが、これはこれでよくまとまっているとは思う。
5章は、初めて読む内容が多かった。視認性に関していろんなデータがあるもんだ。ダイヤル径と読み取りエラー率の関係データなどは興味深い。距離や時間制限の有無などの条件でことなるとのことだが、こういう定量的なデータは初めて見た。一方で最近のブラックモデルやスケルトンモデルは、視認性なんか無視しているが。。。まぁ、それはそれとしてもデータに基づいてデザインがされているのは合理的な設計だと思う。ミリタリーウォッチの文字盤に黒が多いののも、実証データをあげて説明されているので、すごく納得できる。
機械式時計に関する本というよりも、腕時計の発展を文化的、歴史的にまとめた本として、面白かった。
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