時計コレクション (番外53) パテック フィリップ展 ~歴史の中のタイムピース~ 見てきました。
すごい人で並んで並んで見てきたこと。展示の仕方に関して不満があったことは既に書いた。(ここ) とはいえ、展示されていたものは、まさにミュージアムクラス。特にエナメル(訳は七宝としてあったので、以降は七宝と記述します。)は経時劣化がほとんどないので、今でも非常に美しかった。少し印象に残ったものを書いておきたい。
まず個々のものに触れる前に、会場の聖徳記念絵画館について書いておきたい。きまま仙人は初めてだったが、明治天皇のご生誕から崩御までの出来事に関する壁画(パンフレットにはそう書いてあった。)が展示されている。今回は、壁画はそのままに、ガラスのショーケースを並べて、1-3点ずつ時計が展示されていた。建物も大理石が使われているなど、重厚さがあり歴史を感じさせるもので、時計の作られた年代とも合致していて、なかなか面白い空間ができていた。時計を見るのに並んでいた間に時間もあったので、壁画も十分堪能できた。この壁画、奉納者が渋沢栄一など著名人がいるし、作者も藤島武二や鏑木清方などきまま仙人でも名前の知っている有名画家もいて、なかなか見ごたえがあった。大政奉還など、教科書で見た絵ではないかという気がする。
さて時計だが、たしかに難しいのは、工芸品として七宝や彫金、あるいは宝石を見せるのがメインになるのはわかるが、時計好きとしては文字盤やムーブメントもぜひ見たい。残念ながら、後者としての配慮はほとんどされていなかった。
左のような七宝細密画数点の美しさなども本当に素晴らしかったが、今回はメジャーなものというより、ちょっと印象に残ったものをあげてみたい。
(左:七宝細密画と真珠で装飾されたペンダント・ウォッチ)
フランケ七宝:これはギョシェ彫りを施した上に、透明または半透明の七宝を載せているもの。ギョシェが七宝越しに透けて見えるのが美しい。光がギョシェで反射の仕方が変化し、とても美しい。青や、赤のものがよかった。No.61の赤い文字盤は覗きこんで文字盤側を見てびっくりしたので、より印象深い。(クリスティアン9世の懐中時計、肖像画は七宝細密画)
ニエロ:彫金を施した上に黒七宝の釉薬を満たして焼成して仕上げる象眼技法。今回初めてニエロという技法の名前を覚えたが、たしかに今までにも見たことはある。カラフルな華やかさはないが、渋くていい感じ。通常は銀ベースで行われるらしいが、何とゴールドのものが。これも非常に希少品らしい。(ゴールドにニエロ象眼を装飾した懐中時計)
クロアゾネのペンダントウォッチ:女性は懐中時計をポケットに入れる代わりに、こういうペンダント型のものをブローチのように付けるタイプも多かった。クロアゾネ(有線七宝)という手法が生きているというか、立体感があって非常にいい感じ。また留め具のところのブローチ部分と合わさって華やかな一品になっている。
ルネ・ラリック装飾の懐中時計:アールヌーボーの巨匠ルネ・ラリックが装飾した時計。いかにもアール・ヌーボー風のトランペットフラワーとカブトムシの図柄が両面に描かれている。これぞ工芸品というデザインでした。アールヌーボー風の独特の雰囲気が素晴らしい。
ピンクのペンダントウォッチ:何と言ってもピンクの色が秀逸。これもギョシェの上に七宝が施されている。ハンターケースに書かれた青字のローマ数字のインデックスがピンクと合っている。本当にいい色で、カワイイいい一品でした。
スイス初の腕時計:最初の腕時計というとカルティエのサントスというイメージが強い(量産品として?)ですが、1868年製ということは、もっと古いですね。こんなこてこての宝飾時計だったとは。。。時計を隠すカバーの付いたシークレットウォッチタイプ。
偉人の時計:xxxx何世というような貴族はよくわかりませんが、トルストイ、チャイコフスキー、キュリー夫人といわれれば、やっぱり興味が湧きます。キュリー夫人の時計は美しい七宝なうえに、その絵のデザインがすごくいい。前面の大きな花に、うっすらと遠くに見える湖畔と彫像。キュリー夫人のものでなくてもミュージアム級です。またチャイコフスキーのものはクォーターリピーター。鐘の音色が聞きたい。
マリンクロノメータ:こんなものも、と思って説明書きを見ると、マリンクロノメータは今までにたった2つしか作っていないんですね。しかもこれは販売していないということは、1つしか製品としては作っていない。いや~別の意味で貴重ですね。
1940年製造のワールドタイム(Ref.1415-1 HU):カラトラバやゴンドーロなども同様の展示がされていたが、2013年のモデルとヴィンテージモデルが並べて展示されていた。この1940年のワールドタイム、クロノグラフ付き(現行にはない)で、短針が何ともユニークな形状をしている。ブレゲ文字が配された文字盤も、ラグの形状も変化があって非常に面白い。
ちなみにきまま仙人はジュネーブにあるパテック フィリップ ミュージアムには行ったことがない。行った有人にお土産としてもらったDVDを見ただけだ。ぜひ一度行ってみたい。
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