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2013年12月 3日 (火)

蜩ノ記 葉室麟著

葉室麟さんの「蜩ノ記」を読んだ。葉室さんの直木賞受賞作だ。ちなみにきまま仙人は、葉室麟さんという作家も知らなかった。直木賞受賞作ということと、久しぶりに時代物を読んでみようと手にした。

筋の一本通った気持ちのいい作品だった。読後感もすごくいい。ただこれが直木賞受賞作か???

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そんなに複雑な話ではないのだが、江戸時代の慣習感覚やお家の過去の話・人間関係、古語で書かれた記録など、ちょっとごちゃごちゃしてる?と感じたのはきまま仙人だけだろうか? 読みにくかったわけではないが、何度かページを戻って読み直した。

話は、藩主の側室との不義のかどで10年間の藩史編纂の後切腹することが決まっている戸田秋谷、城内で刃傷沙汰をお越し、切腹の代わりに藩史編纂の手伝いと秋谷の監視を命じられる主人公の檀野庄太郎。庄三郎は次第に秋谷の誠実な人柄に惹かれ、無実を信じるようになるが、、、

現藩主の母、お美代の方の出生の秘密や茂兵衛や矢野啓四郎が何者かに殺されたことが、ミステリー仕立てに鍵として進んでいく。が、解決の方法を含め、ミステリーというよりも庄太郎と秋谷やその息子の郁太郎の生き方を描いたヒューマンストーリーとして読むべき小説だ。

何のために生きるのか、生きるとはどういうことなのか、を真っ直ぐに書いていて気持ちがいい。主人公たちの"正義"を貫く考え方や姿勢にも共感できる。悪役である中根兵右衛門でさえ、実は秋谷を認め、庄太郎やその息子の郁太郎に対しても好意的に見ている、とも取れる終わり方にある意味好感が持てた。ただ悪役らしさが中途半端という点で、物語としてはどうなのかとも思うが。

もうひとつ印象的に書かれているのが、友情ではないかと思う。刃傷沙汰を起こした相手の信吾と庄太郎。しかも信吾は悪役中根兵右衛門の甥だ。また秋谷の息子郁太郎と百姓のせがれ源吉、身分を越えた友情が存在する。

個人的には薫とのロマンスももう少し前に出してもよかったかな? ある意味ライバル的役回りかと思っていた市松が2人の間にはほとんど絡んでこなかったし。

あと、いくつか引っかかる部分があったのは気になった。たとえば源吉。百姓の子供で父はぐうたら、厳しい生活。しかし人間として完璧すぎるような前向きな考え方。身分の違う郁太郎との接し方は、不自然にも思われる。子供らしさも少ない。正直違和感がある設定だった。茂兵衛や矢野啓四郎が殺された後の、犯人探しも手ぬるい感じが。

作者は藤沢周平のファンということだが、たしかに藤沢周平に似た印象は受ける。そうなるとどうしても藤沢周平の方がいいなぁと感じてしまう。

とはいえ、少しおいて他の作品も読んでみようと思う作家だ。

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