白隠展
白隠という名前を知った、あるいはよく聞くようになったのはここ数年だ。近年注目されるようになった作家という感じで、ついに白隠展が開かれるようにまでなったかという印象だ。いくつかのTV番組で紹介されているのを見て、ぜひ行っておきたいと思っていた展覧会だった。
白隠慧鶴とは教科書などには載っていた記憶がないが、臨済宗中興の祖と言われる江戸時代中期の禅僧。教えを広めるための書画を大量に残している。が、その多くは各地の寺院や個人のコレクションで、一般の目に触れる機会は少ない。それだけにこれだけまとまって見られたのは有意義だった。きまま仙人も名前を知るようになってから、生の作品を見るのは初めてだった。
30代から書き始めたということで、なくなる80代まで書き続けている。特に年を取ってからの大胆な構図や筆使いが勢いがって面白い。また禅画というと墨だけで書かれているイメージがあるが、着色さえたものも結構あって色使いもいい。
きまま仙人としては、やはり達磨が印象に残る。年代によってさまざまなものを書いているが、なんといってもポスターにも使われている「半身達磨」は素晴らしい。
ギョロ目や大きな鼻の表情がいいし、太い勢いのある大胆な線が力強い。顔の薄桃色や袈裟の赤色、背景の黒と色遣いも大胆。インパクト大だ。若い時代に書かれた真面目な絵の達磨との対比も興味深い。
教えを伝えるためにささっと簡単に書かれたようなものの中には、アートとしては大したものではないようなものもある。墨蹟にいたってはバランスが悪く最後の文字が糞詰まりになったようなものも。が、絵としてもアートとして素晴らしいものが多いのには、白隠という人の絵のセンスを感じた。
画題としては、観音、菩薩、七福神、おかめ、鍾馗、風刺画、自画像など。ほとんどのものに賛がついている。(賛は解説がないと、ほとんど読むこともできない。) 風刺の効いたものも多く、見ていて楽しい。きまま仙人が気に入ったものをひとつ上げると、「鍾馗鬼味噌」。鍾馗(さん)が鬼をすり潰して鬼味噌を作る図。鬼とは欲望の象徴らしく、賛によるとこの鬼味噌は辛口の味がするらしい。よく見ると上の達磨とこの鍾馗、顔はよく似ている。これは白隠自身であるらしい。
これだけまとめて(100点ほど)みられたというのもよかったし、構成も画題ごとにわかりやすかった。解説もわかりやすい。ただこういう禅画の基礎知識がないせいもあるが、賛については、もう少し多くの絵(できればすべて)にせめて現代語訳をつけてほしいと思った。
洋画もいいが、こういう展覧会もたまには面白い。さて、これから本の方も読んでみます。
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