歩きごたえのあるロングコース、3,000m峰をつなぐ仙塩尾根(8月4-8日山行記録(3))
○8月6日(月)雨のち曇り
朝目覚めるとやはり雨。しかし外に出て確認してみると大したことはない小雨。間ノ岳あたりの稜線も見えている。ん、、これは行こう! 軽く朝食を採って、水を減らして(といっても1.5L)、雨具を着込んだ。今回の山行では初日、最終日は歩行時間が少ない(したがって水も少量。)。 2日目が(食料+水があって)一番重い日、今日3日目が一番登りがきつい日、4日目が一番コースタイムが長い日となる。正直雨の上に登りがきついのは気が重い。
5時30分前に小屋を出ようとすると、えっ?雨がひどくなっている。屋根のあるところでほぼ同コースの3人組が朝食の最中だったので、雨の様子を見ながら意見交換。彼らは今日は停滞するとのこと。正直、きまま仙人もすごく迷った。持っている情報だけだと、良くなるのか悪くなるのかも読めなかったからだ。しばらくすると、テントの若者2人組(この2人は15日+予備日の予定で南アルプスの主要峰全山縦走、今日は北岳山荘のテン場まで)が出発していった。やっぱり行こう! 彼らに背中を押されるように、5時44分両俣小屋を出発した。
いきなり野呂川越への取付きを間違えるというミスをしてしまったが、すぐに気付き、まずは300m登って尾根道に。樹林帯でもあり、雨そのものが気になる程ではなかったが、ゴアといえどやはり雨具は蒸れる。あと倒木を超えたりするときに滑る。昨日の下りの時には気付かなかったが、イチヤクソウがきれいに咲いている。他にはゴゼンタチバナなどだが、昨日も見ているのでほとんど気にも留めない。(まぁ余裕がなかったということか) 登りはやはりきつい。今日はこれが(コースタイムで)4時間続くのかと思うと、引き返そうかと弱気になる。それでもがんばって順調に小一時間で6時40分野呂川越着。既に汗びっしょり。雨なのでザックもおろさず軽く休憩。
ここから再び仙塩尾根を行く。雨ということもあり、展望はないが、苔むしたようなところでは、かえって雰囲気がある。静かな樹林帯の道が続く。
苔むした樹林帯の道
しかし野呂川越から三峰岳(ミブダケ:2999m)までは、きまま仙人にとって本当に厳しい登りになった。標識のようなものがほとんどないし、マイルストーン的なピークも少ない。雨なのでこの日はバッテリ節約のためGPSも使っていない。プロトレックの標高計だけを目安に登って行った感じだ。傾斜はそれほど急ではないが、何度も小さな登り返しがある。3日目という疲れが出やすい日だったこともあるのか、ボディーブローのように徐々に登りがきつくなっていく。
今振り返ると、水分・エネルギーの摂取をミスったと思う。小さなペットボトル(350ml)はザックの外のポケットに入れていたが、それがなくなって以降は水分補給が少なかったのだと思う。ましてエネルギー補給はポケットに入れたゼリー食ひとつだけだった。 どのくらい登ったあたりだろう。徐々に足が重くなってきた。気のせいかハートレートもバクバクしだす。ペースもやや速いか? とりあえず少し休もうと、座れる石があったところで小休止。ザックを開けて水分補給とバナナを1本ほおばる。
心拍数を気にしながら、ペースを落として確実に進んでいく。このあたりから数組の登山者とすれ違った。三峰岳の手前で登山道の崩れたところがあるということを教えてもらう。ハイマツにつかまって行けば通行はできるとのこと。雨でメモを取っていないが9時半を過ぎたくらいか、急に森林限界を越えて視界が開けた。眼前に三峰岳が。まだ近いという距離ではない。ただ幸運なことに雨にもかかわらず主要な山の稜線を確認することができた。あれは仙丈岳だ。よく歩いてきたなぁ。間ノ岳も塩見も薄っすら確認できる。中央アルプスも雲上に頭を出していた。いや~決して快晴の大展望と比較はできないが、心に沁みる景色だ。見えてほんとうにうれしかった。ザックからカメラを出して撮影!
悪天の中の仙丈岳
中央アルプス
ここから三峰岳までは急登だが、晴れていたらいいコースだろう。高度感もあるし、展望もいい。雨がすごく残念だった。花も雨には濡れてしまっているが、タカネツメクサやヨツバシオガマ、チシマギキョウ、チングルマ(既に実(果穂)になっているものも)などが咲いている。既にトウヤクリンドウも。と、、、前方にライチョウが! 写真を撮りたかったが、カメラはザックの中。ザックを降ろして取り出したときにはハイマツに。。。そんな中、登山道が少し崩れた危険個所があった。落ちるとかなり下まで滑落しそうだ。雨で滑りやすいこともあり、ハイマツを頼りに慎重に登る。登りだったので、それほど怖さもなく通過したが、ここは下りだったらかなり怖いかもしれない。
急登で高度をぐんぐんあげるが、ゼイゼイいいだす。標高で残り150mくらいは本当につらかった。何度立ち止まっただろう。何度座り込んだだろう。足が上がらない。水分不足によるバテ(軽い熱中症?)かガス欠か? 幸いなことに風は強くなかったので、寒いとは感じなかった。風が強かったらもっとつらかったと思う。雨具の中も汗でびっしょりなので、雨自体はどうでもよくなりつつあった。途中大学生3人組に追い越される。彼らの一番後ろの子も重い荷物で辛そうにしていた。2人で声をかけて励ましあう。人の少ないコースだけにこういう触れ合いは力になった。
三峰岳山頂まで
もう少し
やっとのことで10時7分、三峰岳到着。ホッとひと安心。やっと少し余裕が持てた。
三峰岳から間ノ岳
山頂を望む
三峰岳からは
塩見岳もはっきり確認
天気も今ひとつだし、体力的、精神的に間ノ岳に向かう余力がなく、今朝の想定通り?間ノ岳はパス。そのまま熊ノ平に向かう。このあたりからガスは晴れたり濃くなったり。塩見や仙丈はそのたびに見えたり隠れたり。三峰岳からの下りはガレ場で不安定。足が与太ってきていることもあり、バランスを崩す。ストックを出して、慎重に下って行った。
眼下に熊ノ平小屋が見えた ガスで急に展望がなくなる
しばらく降りたところの小ピークで、雨がほとんど上がったので、休憩してあんパンを食べる。パサパサして喉を通りにくかったが、甘くておいしかった。これでずいぶん元気が出た。やっぱりガス欠もあったみたいだ。ここからはほぼ下りだし、急ぐこともないので、意識的にゆっくり歩いた。歩き出すとまた小雨が。休憩の間だけ止んでくれたのかな。さらに下って三国平を過ぎてしばらくいくと樹林帯の中に戻る。ヘリポート、テン場を越えると11時47分熊ノ平小屋到着。ホッ。
三国平が見えてきた
熊ノ平小屋
この小屋は市営、どこの市かと思えば静岡市のようだ。小屋前にテラスがあり農鳥岳が大きく見える。まず着替えをして、雨具などを食堂のストーブのところに干す。と、何と晴れ間が出てきた。ハンガーが少ないこともあり、シャツは天日干しに。テラスのテーブルで、コーヒーを沸かしてパンも少し。山ではこの時間がいいですねぇ。でも天気がこう回復してくるのなら、もう少し出発を遅らせるべきだったか? まぁいいか。
小屋前のテラスから
望む農鳥岳
小屋には北岳山荘から来たという団体さんらが賑やか。団体さんの別隊のOさん(この人は団体さんの1人の旦那さんなのだがテント泊、団体さんは翌日塩見小屋だがOさんはテントなので三伏峠)が一杯飲みませんかとウイスキーを。もうひとりテントで南アルプス主要峰全山縦走しているという単独の若者(Wさん)と3人で飲み始めた。いやOさんごほんと馳走様でした。きまま仙人も荷物を軽くしたかったし、サラミなどつまみを提供。3人を中心に人も入れ替わり立ち代わり、いや~楽しい時間を過ごさせてもらいました。
熊ノ平小屋に泊まる登山者は、基本的に縦走者。単に百名山のピークだけを目指している人は少ない。そういう意味では、今回のように仙塩尾根を歩いているときに話をする相手としてはうれしかった。ちなみにOさんはきまま仙人よりもだいぶ年上のようだが、ハセツネに何度も出られている猛者だ。このOさんとは最終日にまた親しくさせていただくことになる。
熊ノ平小屋でもうひとり印象的だったのは、フランス人の若者。仕事で日本に来たらしいが、初来日でまだ2週間ほど。既に富士山は登ったらしく、次に高い北岳を含むコースとして、塩見を越えて鳥倉に下山するらしい。富士山はともかく、このコースを日本が初めてという外国人が単独で来るとは。こちらもなかなかすごい。食事の時には、もうひとり単独の方と北海道から来たという2人組と片言の英語で盛り上がった。小屋の食事も角煮を中心にとてもおいしかった。フランス人の若者も(肩ノ小屋と比較して)絶賛していた。あと熊ノ平小屋の水は本当にうまい。小屋の外の水場まで行く必要はあるが、今山行内では一番のうまい水だった。
明日の天気は夕方は崩れそうだが、早いうちはいいらしい。期待しつつ疲れからか爆睡した。。。
その4に続く。。。
| 固定リンク
« 歩きごたえのあるロングコース、3,000m峰をつなぐ仙塩尾根(8月4-8日山行記録(2)) | トップページ | 歩きごたえのあるロングコース、3,000m峰をつなぐ仙塩尾根(8月4-8日山行記録(4)) »
コメント