三匹のおっさん 有川浩著
有川浩さんの三匹のおっさんを読んだ。「阪急電車」を読んでもう少し読んでみたいと思ったことと、本屋さんで平積みされていた須藤真澄さんの表紙のイラストが手に取った理由だ。
小気味いいテンポで楽しく読める本だった。
ユニークな幼馴染の3人組「三匹の悪がき」が還暦となって「三匹のおっさん」として身近な悪を痛快にやっつけていくお話し。ドタバタコメディ系の楽しい小説だ。6話の短編集的構成になっている。
その中で催眠商法にからめて老人問題に触れたり、地域のコミュニティや子供の育て方などさりげなく現代の社会問題が織り込まれているのが有川さんらしい。
「おっさん」が主人公というのは少し変化球なのかもしれないが、きまま仙人としてはまぁ有りがちな地味な設定というか、少なくともキャッチ―な設定とは言えないと思う。展開も多少強引な設定や展開はあるものの、ずば抜けてすごいというところはない。それでもスマートに悪を懲らしめていく三匹の活躍は気持ちいい。けっして高飛車なおっさんたちではなく、解決策に優しさがあり、また現実的な具体策なども提案していくなどスーパーマンのような活躍だ。
また三匹にからんで、キヨさんの孫の祐希とノリの一人娘早苗の初々しい恋も楽しいし、三匹の家族との関係なども面白く仕立ててある。特に派手な格好の孫の祐希がおっさんたちの活躍に一目置くようになり、剣道のけいこを再開したり、キヨさんにカジュアルな服の指南をしたりと(親に対してはバカにしているのに)祖父との関係が良くなっていくものほほえましく読める。還暦のおっさんたちに高校生世代が絡むことによって、いい感じになっている。ある部分「阪急電車」のテイストに似ている部分も。「阪急電車」では歯に衣着せぬ物言いのおばあさんだったが。
特に感動!という小説ではないかもしれないが、読んでいて楽しい、明るい気分になる本だ。
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