時計コレクション (番外30) 日時計-その原理と作り方
著者は関口直甫さん。「1925年生まれ。東京天文台に勤務、在職中主に地球自転運動理論の研究に従事。理学博士。のちに東京大学教授となる。」とある。2001年6月恒星社厚生閣から発刊。価格は税別2,500円。80年刊の「日時計百科」を改題し全面改訂、ということなので、20年前以上に書かれたものが、10年前に改定されたということのようだ。
何といっても原理、作り方(作図方法)がきっちり書かれているのがいい。教科書的で、読み物としては面白みに欠ける部分もあるが、きまま仙人の数学知識でも何とか理解できる範囲で書かれている。ただ作り方の解説書というよりは、学術書なのでノウハウ本ではない点はご注意を。きまま仙人にとって、日時計に関して一番勉強になった本といって間違いない。
章タイトルだけでも目次を挙げておこう。
・はじめに
・第1章 日時計の歴史
・第2章 日時計の原理
・第3章 平面型日時計
・第4章 壁型日時計
・第5章 円環型日時計
・第6章 柱型日時計
・参考文献
第2章では、地球と太陽との関係、地球から見た太陽の運動として、地学の教科書のような解説がある。日時計は地球が自転(1時間当たり約15度回転)することを基本に作られているのだが、実際はその動きは非常に複雑だ。公転もしているし、その軌道は真円ではないため均時差という誤差が生じる。標準時地点との経度差なども補正の必要がある。奥が深く興味深い。
No.46で紹介した香港の骨董街で入手した清朝時代の日時計が、原理的におかしいことなど、この本を読んでいたので気がついたともいえる。No.22のノモスの日時計のような高度日時計の原理などももちろん書かれている。
日時計の原理について書かれた本は、意外と適当なものがない。基本の原理はわかっているので、あまりにも簡単なものだと知りたいことが十分載っていない。詳しいものは古いか英語か難解すぎて読む気がしないものが多い。きまま仙人にはこの本くらいが丁度よかった。
もしあなたが日時計の原理について詳しく知りたい、というのであればお勧めの一冊だ。だが、ちょっと時計コレクター向けの本とは言い難いかな。
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