写楽展
国立博物館の平成館で行われている写楽展に行ってきた。146点(144点という説も)という写楽の作品のうち、142点(写真は残り4点も)が見られるというので、ぜひ見ておきたかった。
写楽だけでなく、歌麿や豊国、春艶ら、また同じ作品の別刷りなどもあるので、280点を越える展示で見ごたえ十分。写楽が良くわかる展覧会で、雨の中出かけた甲斐があった。
9時10分を少しまわっていた頃か、小雨の中、上野駅から国立博物館に向かう途中、西洋美術館にも既に列が。レンブラント展だ、こっちも気にはなるが、今日は写楽だ。
きまま仙人は昔は年賀状を版画で出していた。その年の干支を図案にして。(最後が2006年、その前は2001年、それ以前はほぼ毎年) そのせいもあり、版画には少々興味がある。
写楽のほぼ全作品を見て、改めて写楽という作家の面白さを感じられた。何といっても初めの大首絵28点は圧巻だった。雲母刷り(きらずり)の黒っぽい背景に、ありのままというか特徴をそのまま表現したような表情。妙にデフォルメされたパーツ。とても面白い。女形は男そのままに描かれているのでいるので、役者からは不評だったんじゃないだろうか。役者顔というか、顔が身体に比べて大きかったり、手が妙に小さかったり、芸術家としての写楽らしさがあるのは、やはり1期の大首絵だと思う。
2期は背景が黒でなくなることもあるが、少し華やかになる。役どころがわかるようにか、全身像で舞台の場面がわかるようなものが多い。必ずしもきれいやかっこいいばかりでないところが写楽らしく、表情などは生き生きしたものが多かった。でも2期以降は正直きまま仙人には写楽だとわからないものもある。
写楽はわずか10ヶ月ほどの製作期間しかなく、しかも3期、4期と区分されていた後半期は、普通のブロマイド的作品になり、写楽らしさがなくなっていく。たしかにブロマイドとしては、写楽の(初期)作品は初めは面白がられても、そのうち売れなくなって、一般受けする画風に変えさせられていったということは良くわかる。
あと同じ役者の同じ舞台を勝川春英や春艶と見比べられるのも違いがわかって面白い。違う版で微妙に変更されているものや、保存状態の差で色があせてしまった差なども興味深かった。その他、喜多川歌麿の美人画はやっぱり美しかった。
もうひとつショップでアダチ版画研究所というところが、復刻した版画を販売していた。かなり忠実に再現しているようで、雲母刷りの刷りあがりはこんな感じなのかというのもよくわかった。また当時の色はこんなに鮮やかだったのかと思ったし、白地の服に白で模様を重ねたり、黒字に黒を重ねたりしているのは、200年も経ったものでは正直わからない。大首絵の松本米三郎の黒い帯、右下に黒のベタがたしかにちょっと違和感はあった。実は黒の重ね刷りで鶴の模様が入っているのだ。復刻を見た後、もう一度実物を見に戻ったが、斜めから角度をつけてやっと模様があるらしいことがわかった。ただ、わかっていても鶴だとは認識できない。復刻の意義をすごく感じる。
松本米三郎
常設展は初めてではないので、一部をざっと見ただけだったが、写楽展にぴったりのコーナーが。スタンプ5つを重ねて押していって、三代目大谷鬼次の江戸兵衛を作ってみるというもの(実際は11刷)。子供向けのコーナーだが、大人も結構やっていたので、きまま仙人もやってみたくなって試してみた。
何だかんだと3時間近くも館内にいた。雨で山歩きには行けなかったが、文化的ないい一日になった。
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