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2010年11月25日 (木)

利休にたずねよ 山本兼一著

直木賞受賞作、山本兼一さんの「利休にたずねよ」を読んだ。きまま仙人の実家が堺にあることもあり、利休は親しみがあるが、一方で知らないことも多い。直木賞受賞作ということもあって、何も躊躇なく購入した。

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この話は、利休が切腹をする日から逆に遡っていくという手法を用いている。(最終章のみエピローグ的に切腹の日(切腹後)に戻る。) 各章には、その章の主人公として利休であったり、秀吉であったり、利休の妻宋恩、亡くなった前妻のたえ、茶の湯の弟子や師匠などが指定されている。初めは、てらいを狙っただけで、この構成である必要はあるのか?と少々懐疑的に思いながら読み進めていったが、間違いなくこの小説に個性と独特の繊細さや情緒を与えていると思う。

物語は利休が人にも見せたがらない、緑釉の香合とそれを所有するに至った若き日の利休(千与四郎)とある女性との出来事を大きな軸に置き。利休の生き方、利休の「美」というものを表現していく。各章は読みきりのような感じで、出来事的にはその中で完結しているか、結論を類推させてしまっており、出来事的展開という点ではほとんど断片的といっていい。むしろ最終的に切腹するにいたる利休の生き方、利休の「美」に影響を与えたものが、時間を遡りながら紐解かれるという構成になっている。緑釉の香合の女性との下りをクライマックスに持っていくのに、この構成は不自然さもなく非常に有効に働いている。先にも書いたが、同時にこの小説に個性と独特の繊細さや情緒を与えていると思う。

登場人物も秀吉、家康、三成らなかなかの大物が多い。彼ら武将達とも一歩も引けを取らぬ人物として利休も描かれている。個々のところはネタバラシになるので書きにくいが、各登場人物の美や茶の湯の考え方、向き合い方、あるいは利休との関係などなかなか巧妙に表現されている点も面白い。

敢えて難点を書かせてもらうと、ひとつは茶の湯に馴染みのないきまま仙人にとって、道具の名前など茶の湯に関する部分が読みにくかったこと。(辞書も引きました。) また、どう考えても緑釉の香合の女性との話は、リアリティに欠ける部分が多いこと。(これは仙人の感想です。) 出来事的展開の中で書かれていない部分が少々気になること。(たとえば九州に追放された宋陳がどういう経緯で京に戻れたのか?) などだろうか?

もうひとつきまま仙人も!読み終わって疑問に思ったことが、この本のタイトル「利休にたずねよ」である。何をたずねよといっているのだろうか? 解説で宮部みゆきさんがユニークなひとつの答えを書いてくださっているが、きまま仙人はまた違ったことを聞きたいと思った。

いつも読んでいるミステリーなどとはまた違った小説で非常に面白かった。

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