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2010年11月 3日 (水)

時計コレクション (番外22) 時計のはなし 平井澄夫著

今日は少し珍しい本を紹介したい。平井澄夫著の「時計のはなし」。近江神宮の時計博物館の売店で見つけた本だ。

B10_hiraitokei_01  

 

 

 

 

著者の平井澄夫氏とその父親である平井春夫氏は東京御徒町で平井時計店を営んでこられた。父、春夫氏の夢は時計博物館を作ることであったそうだが、それはかなわなかったものの、紙上博物館として残そうとされたらしい。時計商組合の機関紙に「和洋時計考証史」として100回も連載されていたものをベースに加筆編集されたらしい。タイトルも実にシンプルでいい。

もうひとつ平井さんの経歴で触れておきたいのが、アメリカに本部を置く古時計の収集研究を行なう団体NAWCC(National Association of Watch and Clock Collectors,Inc.)支部会長として活躍されてきたことだ。

B10_hiraitokei_02

 

 ブレゲの紹介、ツールビヨン(トゥールビヨン)の解説やマリーアントワネットの複雑時計について

 

 

町の一時計屋の親父(親子二代)が見てきた、時計の変遷、歴史を時計収集家・研究家としてまとめた本となっている。平井氏は学者ではないが、その幅広い内容は何より時計への愛情が伝わってくる本だ。きまま仙人もこのブログで時計コレクションの紹介をし、HPにも同じものをアップしている。が、所詮単なる時計好き、平井さんの本を読むと恥ずかしくなる思いもあるが、読んでくれる人がいるし何かを調べるときの参考になるのであれば、書けることを書いていきたい。

内容は日時計や水時計といった機械式時計以前の歴史的なものからはいり、塔時計、ゼンマイの発明からブレゲ、海洋時計への発展。脱進機についてももちろん図入りで触れられている。こういうことは、他に書かれている本もある。興味深いのはむしろ五章からだ。時刻制度の話から和時計が作られるまでや、長崎の時計師の話は、腕時計中心の時計好きには新しかった。本当に読み応えがある一冊だ。

内容は本当に多岐に渡るが、それがよくわかると思うので、章レベルの目次を記しておきたい。これだけ多岐にわたって書かれている日本語の本はなかなかないと思う。

平井時計店と私-序にかえて
第一章 時を計る 日時計・水時計・火時計・砂時計
 Ⅰ.時はどのように計られてきた
 Ⅱ.日時計の歩み
 Ⅲ.夜の長さを計る
第二章 機械時計の出現 塔時計から室内時計へ
 Ⅰ.塔時計の誕生
 Ⅱ.ゼンマイの発明
 Ⅲ.初期の室内時計
 Ⅳ.振子時計の誕生
第三章 美と巧緻をもとめて
 Ⅰ.華麗な装飾時計
 Ⅱ.偉大な時計職人プレゲ
 Ⅲ.イギリスの黄金期
 Ⅳ.海洋時計の開発
第四章 脱進機の改良と自由振子の発明
 Ⅰ.脱進機の進化
 Ⅱ.振子と地球の時間
第五章 わが国の時刻制度
 Ⅰ.王朝の時計
 Ⅱ.建長寺の時刻制度
 Ⅲ.江戸時代の時刻制度
第六章 江戸時代初期の時計
 Ⅰ.南蛮時計
 Ⅱ.和時計への道すじ
 Ⅲ.江戸の暦と時計師
第七章 長崎の時計師たち
 Ⅰ.蘭学の復興と長崎
 Ⅱ.御用時計師・幸野吉郎左衛門
 Ⅲ.吉郎七の時代
 Ⅳ.その他の長崎の時計師たち
第八章 二丁テンプ和時計と江戸時代の科学者たち
 Ⅰ.二丁テンプ時計登場
 Ⅱ.浅草天文台と寛政暦
 Ⅲ.文政の木製大時計
 Ⅳ.田中久重の万年時計
第九章 明治維新の時計師から現代の電子時計革命まで
 Ⅰ.幕末の西洋時計
 Ⅱ.明治改暦と時計の発展
 Ⅲ.服部金太郎と精工
 Ⅳ.復興と新時代
おもな参考文献
和洋時計関連年表

内容も読み物として、よくまとまっていると思うし、興味深い内容も多い。特に日本における時刻制度から長崎の時計師の話、江戸時代の科学者や時計師の話は内容も非常に濃い。他にも日光東照宮の宝物館にあるスペイン国王から送られた熊のからくり時計のはなしなどはすごく興味深い。また、なかなかこれだけまとまった本も記憶にない。

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  熊のからくり時計   江戸時代の時計師    精工舎

網羅的、教科書的にまとめられているところもあるので、多少退屈だったりという面もあるが、意義は大きいと思う。アマゾンやヤフオクなどネットでもほとんどヒットしないし、きまま仙人も購入時以外見かけたこともない。

欲を言えば、コストの関係はあると思うが、写真はカラーであってほしかった。

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