上村松園展
もちろん上村松園の絵は何度か見たことがあるし、美人画で有名な画家だということは知っている。でもこれだけまとまって松園の絵が見られる機会はなかなかないと思う。また松篁、淳之の上村三代の母、祖母としても興味があった。
デッサンを含めると100点を越える作品で、すべて松園のもの。質量ともに見ごたえがあった。10代(17歳?)の作品から、晩年70歳代の作品まで。10代の作品、「四季美人」なども10代とはとは思えない完成度で、繊細さや品というのはもともと彼女のセンスなのかもしれない。
一連の作品を見てまず感じるのが、絵としてのきれいさ、安定感、品があり、掛け軸や屏風、額にはまって、1枚1枚が本当に美しい。特に”品”は秀逸。立ち姿やちょっとした動きにも日本女性の優美さがでている。その上着物、帯の色や柄が鮮やか。髪もほとんどは結った髪で、細かな線やぼかしも実にきれい。絵として本当にきれいだ。
また日本画ということもあり、必要なモチーフ以外は背景も省略されてシンプルなのもいい。「虹を見る」という絵では屏風の右側は右上にわずかに虹の弧が描かれているだけで、あとは何もかかれていない、この空間がいい。
そして表情、姿であらわす感情。顔は一見能面というか、無表情に思えるが、松園自身はちゃんと書き分けているのだと思う。デッサンを見ると、いろいろな試作が面白い。本当に能面という感じで、感情をストレートに出していないだけに、何を思っているのかがわからない絵も多いが、それゆえに引きつけられるものもある。
あとすだれや薄い掛け物、団扇などで透けている部分の描き方が印象的だった。薄いショールのようなものの下の身体や髪もいい感じだったし、すだれ越しの女性の線もいい。
また蛍などの虫や虹、庭の草花などを眺めている絵が多いが、物憂げな視線が印象に残る。蛍などを見ているというより、さらにその奥の何かを見ているかのようだった。
そこそこ人は多かったが、まずまずゆっくり見ることができた。若干うるさい老夫婦が何組かいたが、もう少し静かに見てもらえたらとは思った。が、全体としてはなかなかいい展覧会だった。
やはりきまま仙人も男。時代は違えど美しい女性を見るのはなかなか楽しいものだ。
| 固定リンク
コメント