« 美しき挑発 レンピッカ展観てきました。 | トップページ | まだ花遠し?カルスト地形の山陵、藤原岳(5月1日山行記録(1)) »

2010年5月12日 (水)

時計コレクション (58) Pierce Chronograph(Cal.134)

今日紹介するのは、1940年代製と思われる ピアース(PIERCE)のクロノグラフだ。

ピアースのクロノは、今でこそ主流となりつつある垂直クラッチ(Vertical Friction Clutch) を世界で初めて採用したことで有名。しかしピアースのクロノは程度がいいものは珍しく、きまま仙人も今まで実物をほとんど見たことがなくて、本やネットでしか知らないものだった。予てから是非欲しいと思っていた一本だったのだ。今年初め、たまたま程度がよさそうで安値スタートのヤフオクの出品があり、ラッキーにも思っていたよりも安く落札できた。知名度が無い分、あるいは垂直クラッチという特殊な機構を使った廉価品という評価のためか、そう高くはならなかった。

58_pierce134_01_s58_pierce134_02

 

 

 

 

 

ピアースはマニアには有名なブランドだが、一般の知名度は低い。いろんなサイトで、よく同じような文章を見かけるが、ちょっと引用させていただいて、ピアースについて簡単に紹介しておきたい。

ピアース(正式名称は「Manufactures des Montres & Chronographes Pierce S.A.」)は、1883年にスイスのビエンヌでレオン・レヴィ(Leon Levy)と彼の兄弟によって創設された。社名の通り、クロノグラフを中心に比較的廉価な時計をリリースする。1930年代からは、ムーブメントメーカーからの機械供給が不安定なことから、自社でムーブメントを生産するようになった。1936年、ピアースはCal.130で、世界で初めて垂直クラッチを採用する。クロノグラフモデルは、第2次世界大戦中にイギリス軍が調達したという事実もある。が、その後の足どりについては、残念ながら詳細は不明。ピアース社自体1950~60年代に途絶えてしまった可能性が高く、アフターサービスの体制も無く、そのためかコンデションの良い個体は非常に少ない。

クロノグラフとしては、縦2つ目ダイアルのCal.134(本機)とCal.130で、パテントも持つ、独自構造のユニークなムーブメントは、非常に興味深い。この時計のCal.134はCal.130の後に開発され、Cal.130がワンプッシュクロノであったのに対し、Cal.134は2ボタンのクロノグラフとなっている。作動方式はピラー・ホイールによる。シチズンのレコードマスタに採用された57系キャリバーやそれに続く国産クロノの特徴とも言える垂直クラッチにどう影響を与えたのかは不明だが、国産クロノの垂直クラッチがまったく別に開発されたとも考えにくいので、おそらく何らかの参考にしたのではないかと予想される。

58_pierce134_05

 

 センター部分にクラッチがある

 

 

改めて言うまでもないが、垂直クラッチの特徴は針跳びがしにくく、歯の部分が直接当たらないので歯車にはよい。一方で厚みが出やすく、クロノ機構が見えにくいというデメリットがある。キャリングアーム方式の方が美しいのは確かだ。ムーブメントの各パーツの仕上げを見る限り、国産クロノと同様に廉価版という感じは否めない。垂直クラッチの方が構造的に安価に作れるのかもしれない。

比較的少ない縦2つ目のクロノで、12時位置の分積算計は、30分計ではなく60分計である。スモセコに比べるとかなり円が大きい。クロノグラフの操作は、通常のクロノボタンと逆側で下側でスタート、ストップ、上側のボタンでリセットを行なう。何故この様な方法になっているかは不明だが、一説には、従来方法での何らかのパテント(特許)費用が発生するのを嫌って、逆にしたのではないか?と言われている。初めてこのムーブメントを操作してみて、クロノグラフのボタン操作感は特徴的だと思った。個体差もあるかもしれないが、スタートボタンは押し込むようにかなり重い。垂直クラッチなのに、なぜか少しバラついた針跳びがある。リセットはValjoux72(バルジュー)などのように、リセット後ハンマーが戻る(ハートカムから離れる)タイプで、仙人が入手したものは、非常に小気味よく帰針する。手巻き、17石、5振動/秒(18,000振動/時)、耐震機構なし、チラネジ付テンプ、パワーリザーブは42時間。

文字盤はシルバー(白?)で、外側からタキメータ(青字)、テレメータ(黒字)、クロノ秒目盛り(黒字)の3重目盛り。赤いクロノグラフ針が特徴的だ。長短針、アラビア数字のインデックスには夜光入り、もちろん現在は光らない。クロノ針以外はブルースチール。ケースも面白く、裏蓋は何と珍しいビス止め。防水仕様になっている。耐磁ケースでもある。けっして廉価版ではない作りだ。縦2つ目のクロノは、Venus170やValjoux77などが有名だが、スモセコと分積算計がセンターから離れているためか、比較するとケースサイズがやや大きめに感じる。

58_pierce134_04

  

 

 縦2つ目のヴィンテージらしい文字盤

 

58_pierce134_03

 

 

 裏蓋はビス留め

 

 

尚、大胆な穴のあいたベルトもなかなかいい感じだが、ヴィンテージのレーシングストラップらしい。

|

« 美しき挑発 レンピッカ展観てきました。 | トップページ | まだ花遠し?カルスト地形の山陵、藤原岳(5月1日山行記録(1)) »

コメント

きまま仙人様。
当方海外に住んでいまして、お店で同じ物を見つけて購入を考えております。参考にしたいのですが失礼でなければ購入金額を教えてもらえませんか。あと使用した感じなども知りたいです!宜しくお願いします。

投稿: aki | 2012年4月22日 (日) 07時55分

詳細を公開して書きにくい内容なので、メールの方に再度お問い合わせいただけないでしょうか。メールでお答えさせていただきます。

投稿: きまま仙人 | 2012年4月22日 (日) 22時16分

祖母の形見で手巻きのpierceと思われる時計を所持しています。巻いても動かなかったのですが、チッチッチという音がかすかに聞こえたので、ダメもとで修理に出したら、生き返り愛用しています。fbに昨日ぐうぜんに写真を投稿しました。教えていただければ幸いです。およそ70年ぐらい前のものと思っています。

投稿: 清原ふみ子 | 2013年2月26日 (火) 09時57分

写真見させていただきました。
ブレスの取付け部なども変わっていてアンティークらしい時計ですね。
古い時計が動くのはそれだけでうれしいですよね。

Pierceの時計については私もブログに書いた以上の情報はほとんど持っていません。まして外観のみでレディースとなると、、、
何かわかりましたら、またアップしたいと思います。

投稿: きまま仙人 | 2013年2月26日 (火) 18時58分

こんばんは、きまま仙人様。
僕もこのクロノの黒文字盤のやつを手に入れたのですが、動かない上にガンギがないようなのです。
Ebayでcal.130のガンギは見かけるのですが、134と互換性はあるのでしょうか?
ピアースのことはクロノグラフ関連の記事でも取り上げられないので、お教え願えますか。
よろしくお願いします。

投稿: タマダ | 2014年4月18日 (金) 00時05分

タマダ様
小生ムーブメントに関して多少の知識はありますが、時計師ではないのでパーツの互換性まではわかるかねます。インテージウォッチのメンテナンスもしてくれるショップの方に聞いてみてはいかがでしょうか?

投稿: きまま仙人 | 2014年4月19日 (土) 22時33分

きまま仙人さま、お返事ありがとうございます。
気長にEbayに部品がでるのを待ってみます。
僕も古いクロノグラフが好きでやたら買うんですが、結構Ebayでは部品が抜けてたり難物が多いです。
どうにか直したいと思って部品を買うんですが、どうも泥沼状態で、完動品を買ったほうが安いような状態です。
最終、必殺アジアで直すしかないのかもしれません。ムンバイあたりでファーブル・ルーバのガッチャ生産拠点とかもありますし。
先日、10個ほど3針を持っていきましたが動くようにはしてくれました半分は止まるんですが。

投稿: タマダ | 2014年4月19日 (土) 22時45分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 時計コレクション (58) Pierce Chronograph(Cal.134):

« 美しき挑発 レンピッカ展観てきました。 | トップページ | まだ花遠し?カルスト地形の山陵、藤原岳(5月1日山行記録(1)) »