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2010年4月13日 (火)

アイガー北壁 -NORDWAND-

映画「アイガー北壁」を観てきた。山屋としては一応見ておきたいな、くらいの軽い気持ちで劇場に行った。実話の映画化というくらいは知っていたが、ストーリーもろくに知らず、恥ずかしながら、初登頂物語だろうと思っていた。(全く違った。)

実話の持つ重みというのだろうか、本当にぐっとくる感動的な映画だった。物語のどこまでが事実で、どこまでが想像・脚色なのかはわからないが、少なくとも大方の登場人物や結末は真実なのだろう。いろんな意味で胸に訴えてくるものがあった。

きまま仙人は、2000年の冬にスイスに行った際、映画にも出てくる登山電車でユングフラウヨッホを訪れた。その日は快晴で、麓のクライネ・シャイデックから見たアイガー北壁(3枚目の写真)は、他の山と違い、雪がほとんど付いていないのが印象的だった。(雪が付かないほど急、あるいは風が強いということ。) 実際にこの目で見ただけに、アイガー北壁はアルプス三大北壁という以上に響くものがある。もちろん、登れるものなら登ってみたいとは思う引力のある山、壁だった。

この映画は何といっても北壁を登る臨場感、また高山・自然の映像のリアリティがすばらしい。迫力あり、緊迫感あり、高度感あり。撮影技術の高さは見事だ。大変だっただろうなぁと思う。中でも主人公の一人の名の付いたヒンターシュトイサートラバース、特に吹雪の帰路は手に汗握らずにはいられない。他にも雪崩のシーンやラストシーンも良かった。

そして登場人物たちの心理描写がいい。主役の2人、トニー・クルツとアンディ・ヒンターシュトイサーのアイガー北壁挑戦にいたる違いや、最後の行動の差もよくわかる。ザイルをつなぐ2人の信頼感もいい。2人の幼なじみで仕事を忘れて心配するルイーゼ、ナチス政権下の一部ドイツ人の傲慢さを持つ記者アーラウ(上司)、彼を良く思わないオーストリア人、怪我をしながらも功をあせるオーストリア隊のアンゲラー、彼を止められなかったライナー、と脇役も印象的だ。

時代も、装備も、登る目的も仙人とは違うが、山屋としては共感する部分は多い。もちろん、ナチス政権下で人生に他に目的を持てない若者が、命がけで初登頂を目指す。というのは時代の差を強く感じる。しかし、英雄を目指すがゆえに、危険な高峰を目指すことは十分理解できる。また一人の判断ミスがパーティの悲劇につながる。これはいたたまれないし、現代でも起こりえる。もし、もしオーストリア隊がケガをした時点で引き返していれば、、、この悲劇も無かったかもしれないし、歴史が変わっていたかもしれない。

最近の山岳映画では、昨年「剣岳 点の記」があったが、映像・景色のすばらしさは点の記もよかったが、生死ぎりぎりの状態でのドラマ性という点では、やはりアイガー北壁の方が心に訴えてくるものが多かった。見る人の好みはあろうかと思うが、仙人はアイガー北壁に1票入れたい。

この映画はドイツ映画だった。台詞も、スタッフロールもドイツ語。ハリウッド映画ではないためか、上映している映画館も非常に少ない。もっと上映劇場が増えてもいいのになぁと思った映画だった。

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