時計コレクション (番外5) The Theory of Horology
今回は時計の基礎を勉強した教科書のひとつを紹介しよう。「The Theory of Horology」、スイスの時計技術者養成学校WOSTEP(ウォステップ:Watchmakers of Switzerland Training and Educational Program)公認の腕時計技術解説書。初級教科書といっていい。ハードカバーで368ページ、高い($214.5)だけあって立派な本だ。著者はCharles-Andre Reymondin、Georges Monnier、Didier Jeanneret、Umberto Pelarattiの4人。
きまま仙人が所有しているのは、英語版だ。フランス語版、ドイツ語版などもあるようだが、おそらく日本語版は無いと思われる。
腕時計技術書のほとんどは発行が古く、現代の腕時計に対応する技術書が少ないことから、スイス時計学校連盟「FET(Swiss Federation of Technical Colleges)」が1999年に本書を発行。所有の本は2005年7月発行の改訂版。日時計など古代の時計の紹介から、輪列やカレンダなどの時計理論、ぜんまいやギヤなど各パーツについての解説、ミニッツリピーターやパーペチュアルカレンダーなどの複雑時計のメカニズム、磨耗・腐食にいたるまで解説されている。
機械式時計の機構は、いろんな本やネットで多数解説されているので、少し探せば教科書的なものは見つかるだろう。しかし、意外と時計好きが勉強するには、簡単すぎたり、難しすぎたりと、なかなか適当なレベルのものが少ない。この本は、そういう意味ではレベル的に丁度どいい本だと思う。さすがに時計学校の教科書、時計に興味を持った初期に読むには、体系立てられて解説されているし、仙人には難しすぎず、易しすぎず、お勧めの一冊だと思う。もちろんやや難しい数式やトライボロジー(表面・接触・摩擦・摩耗・潤滑を取り扱う学問)の章などはほとんど読み飛ばしたが、それでもまぁ問題ないかと思う。(まったくの時計初心者の方には難しいかもしれない。念のため。) この本で物足らない方はグノモン社の本やWOSTEPの中上級の教科書などを読めばいいのではないかと思う。
時打ち機構の解説
スプリッドセコンドの解説
難点は日本語ではないということだろう。ただ英語もいうほどは難しくはなく、図が非常に多いので、仙人でもほとんど問題なく読めた(見れた?(笑))。もちろんそこそこ辞書のお世話にはなったが。ただ仙人がこの本をネットで注文をした頃は、基本的な輪列やカレンダ、クロノグラフなどの機構は、既にそこそこ知っていた。この本を読んで、はじめていろいろ勉強したというわけではない。だから問題なく読めたという部分はあるかもしれない。
日本の教科書で言うと、まず思い浮かべるのが先にもあげたグノモン社の基礎時計読本/標準時計技術読本だろう。グノモンの教科書は、内容的に難解で非常にお堅い。しかも現在には少し古い。図はあるが、カラーではない。仙人のような趣味として読みたい者には、持て余すというか、まして初心者にはハードルが高い。その点この本は、カラーの図が非常に多く、しかもきれいで大きい。非常に楽しく基礎を理解できる。もちろん、グノモンのレベルまで深いことは書かれていない。
以下に目次を挙げておきたい。久しぶりに開いたが、スプリットセコンドの仕組みなど、今広げて見ると読んだ時のことを思い出して懐かしいなぁ。。。
<目次>
1.The Concept of Time (時の概念)
2.Instruments for Measuring Time (時を計る道具・装置)
3.Simple Mechanical Movements (シンプルな機械式時計のムーブメント(の構成))
4.The Driving Force in a Mechanical Watch (動力)
5.The Geared Transmission System (輪列)
6.Escapements (脱進機)
7.Regulating Units (調速)
8.Self-winding Watches (自動巻時計)
9.Calendar Mechanisms (カレンダ機構)
10.Striking Mechanisms (時打ち・アラーム機構)
11.Chronograph Mechanisms (クロノグラフ機構)
12.The External Parts of the Watch (外部パーツ/ケース・針等)
13.Tribology (トライボロジー)
14.Clockmaking (クロック製作)
15.The Electronic Watch (電気式時計)
Exercises (問題集)
小目まで書くと多すぎるので、各章のタイトルだけにしたが、まさに教科書という構成だが、全般にわたりちゃんと触れられている。ぜんまいやギヤ、磨耗・腐食は、そこまでは、という方も多いかもしれないが、普通時計雑誌などでは触れられない知識をしることができる。
脱進機の調整 理論は数式で解説も 人工ルビーなども
非常にいい本だと思うので、趣味としてこれから時計の機構を勉強したいという方にはお勧めしたい。ただ、難点は少し高いということだろう。現在、日本のAmazonでは扱っていないようだが、リンドバーグや米国のAmazonから購入できる。
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