時計コレクション (55) Bucherer Lucerne Onepush Chronograph (Hahn Landeron)
たしかに買ってしまったのもわかる面白い時計である。何が気に入ったかというと、
①当時まだヴィンテージの裏スケ蓋作成サービスがポピュラーではなかった(ごく限られたショップのみやっていた)が、この時計は風防用のパーツを裏蓋の代わりにはめ込むという斬新な方法でシースルーバックに改造してあった。(ちなみに本来の裏蓋は所有していない。)
②ピラーホイール、キャリングアーム方式のクロノグラフ、チラネジ付テンプ
③ワンプッシュクロノグラフ、しかもベビークロノと言ってもいい小ささ
④ブッヘラー(Bucherer)製。ブッヘラーはルツェルン(Lucerne)に本社をもつ歴史ある宝飾店。まぁネームバリューは全然違うが、カルティエのようなもの。仙人はルツェルンを訪れた時、ブッヘラーの本店にも立ち寄ったことがあり、何となく親近感をもった。
⑤文字盤周にテレメータ、センターに渦巻状のタキメータ、文字はブレゲ文字とクロノ好きにはたまらない文字盤
⑥バネ棒しきではなく、貼り付け式(アイロン式)のベルトが珍しい。
などである。
裏蓋を風防に代えた裏スケ
ムーブメントはランデロン製であることは間違いないと思うが、Cal.No.は不明またはない。番外1で紹介したゲルト・R・ラング氏のChronograph Wristwatchesの図(下図)と比較すると、ランデロンが1925年にフォンテンメロン社に吸収される以前のアーン・ランデロン(Hahn Landeron)製のものと思われる。(<注>通常使われるランデロンの前身の会社。吸収後フォンテンメロン社ランデロン支社というのが一般に言われるランデロンです。ちなみにランデロンは地名) 吸収される前に作られたのか?吸収後もこのムーブの製造が続けられていたのかはわからないが、1920年代から遅くても40年代という、かなり古い時計であると思われる。おそらくは吸収前の25年以前のものだろう。年代を考えると、この時計の状態はいい方かもしれない。またChronograph WristwatchesにもCal.No.の記述はない。
ラング氏の著書に掲載されているムーブ
17石、5振動(18.000振動/時)6時位置のスモセコのみで、積算計、耐震機構はない。ワンプッシュクロノというのが特徴。積算計がなく、ワンプッシュクロノである方が当然パーツ類は少なく、シンプルになる。そのためブリッジが小さく、丸穴車や角穴車がはっきり見えるのも面白い。
ヴィンテージらしい文字盤
やや劣化した白文字盤に赤のテレメータ、タキメータが当時の雰囲気を残していて非常にいい感じ。周にテレメータ、センターに渦巻状のタキメータというデザインは他社でも見ることがあり、当時はよくあったデザインではないかと思われる。ブルースチールの針もとても美しく文字盤に合っている。ただ短針や一部パーツはオリジナルではないのではないかと見ている。(長針はブレゲ針なのに短針は違う?ため) 雰囲気的にはミリタリーかな?と思うが、宝飾店ブッヘラー製だけに、詳細は想像の域をでない。
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