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2009年6月29日 (月)

剣岳 点の記 見てきました。

映画「剣岳 点の記」 見てきました。まず面白かったです。映像も苦労して登って撮影しただけあって、さすがにきれいで。ほんとよく撮ったなぁと思うシーンは一杯。特に雪崩のシーンは迫力ありました。

ただ、敢えて山屋としては少々厳しいめにコメントしたいと思います。

ちなみにきまま仙人は、過去に2度剣岳には登っています。2度とも別山尾根からの一般ルートで最高の天気でした。室堂にはそれ以外にも何度か通っています。昔の山行を少し思い出したところもありました。

まず見終わって思ったことは、全体としては非常にリアルに作られていて、実際原作だけではわかりづらかった当時の装備などがイメージできて良かったです。よくあんな装備で何日間も山に入っていた、よく登ったなぁ、よく危険な雪道を歩けたなぁとつくづく感心します。また測量という仕事の大変さを改めて思いました。

逆に細部はかなり原作と違ったところがありました。これは賛否両方の意見があるでしょう。ある時間(今回の作品は150分)に収めなければならない点。華(女優陣)が欲しい点。ストーリーとして万人受け、一般受けしやすくしたいなど、いくつかの制約や意図があったのでしょう。原作のいくつかの話がはしょられ、変わりに新しい人情ドラマがいくつか入っていました。これについては個々のストーリーについてはコメントしませんが、おおむねまぁいいんじゃないかとは思います。ただいくつかは???でした。原作を読んでいると、あるいは山屋としてみると不自然に思った点が何点かあったのは事実です。こだわる必要もないかと思いますが、少しだけ気になりました。

たとえば日本山岳会のかかわり方、剣沢とかであんなに近くにテントを張る必要があるだろうか?ライバル視、少なくともどちらが先かを意識しているのに。 また手旗信号でメッセージを送るのに、なぜあんなにタイミングよく見つけられるのだろうか? 実際の山では食料の重要性や荷物の軽量化を考えると、ビスケットをたくさん缶のまま持って来て、どうぞと簡単にあげるだろうか?山岳会は山に滞在できる期間の制約を持っていたところが無視されている点。などなど。。。

他にも違和感という点では、生田信がはやって怪我するシーンでの柴崎の判断。原作では長次郎は他の案内人では登れない、通れないようなところも登ってしまうような、動物的な登攀技術・勘を持っていたことになっているが、正直香川照之の登り方は???。あと登頂時のパーティのメンバー構成が違うことや各登場人物のキャラクタもかなり原作とは違っていた。誤解しないでいただきたいのは、原作と違うこと自体が良くないとはいっていません。

映像についてもコメントしておきたい。長次郎雪渓や八ツ峰を背景にした稜線での撮影など、よく撮ったなぁという絵は多かった。本当に大変だっただろうと思う。十分すばらしかった。が、敢えて言うなら前評判や宣伝でいろいろいわれていたので、期待が大きくなり過ぎていて、割と普通に見てしまったかも知れない。あといかにいい映像でも実物を見た感動を越えられない、ということは改めて感じた。それだけ実際の山々は美しいと思う。あと仙人池からの剣など、ストーリーと直接は関係ない(ストーリー上なくてもいい)すばらしい映像が随所に(特にエンドロール?)にあったのは面白かった。そういう意味ではカメラマン出身の木村監督のこだわりが感じられる。

とにかくめったに類をみない映画になっているということだけは確かだ。原作を読んでいない人、山屋以外の人がどう思うのかは判らないが、見るに値するすばらしい映画に仕上がっていると思う。

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