時計コレクション (4) Minerva Triple Calender Chronograph (Valjoux72C)
コレクションではなく、日常でも普通に使いたかった(もちろん毎日ではないが、)ので、耐震機構付き、ねじ込みケースバック、できればカレンダー付き、という条件で検討。もちろんオーソドックスできれいなムーブメントのもので、裏スケ加工してもらうつもりだった。はじめはムーンフェイズ付きのValjoux(バルジュー)88をターゲットに探していたんだが、なかなかいい出物がなくて(裏スケ加工してくれるショップ限定で探していたこともある。)72Cを選んだ。 曜日、月表示が英語というのも使いやすい。Anti Magneticのおまけまでついている実用的な一本。今でもいちばんよく使うビンテージの一本である。
このミネルバはおそらく1940年代後半(または50年前後)の製造と思われる。ゆうに半世紀、仙人よりもはるかに古い一本だが、機械の精度も美しさもその魅力はまったく色あせていない。文字盤はシルバーの顔に3つ目のインダイヤル(9時:スモセコ、3時:30分積算計、6時:12時間積算計)、ポインターデイトに曜日、月の表示が12位置に並ぶ。ブルースチールの針(長短針は夜光入り)と日付のインデックスが青で上品な雰囲気。ポインターデイト針の先の赤がアクセントになっている。ポインターデイトは現行品では少ないが、味があって仙人は大好きだ。ケースのエッジやヘアラインもきれいに残っていて美しい。あえて選んだ濃紺のクロコベルトがお気に入りだ。本当に古き良きものの本質をみせてくれる時計だと思う。
バルジュー72Cは18,000振動/時、17石、もちろんピラーホイール、カップリングクラッチ、スライディングギア。チラネジ付きのテンプが古さを感じさせていい。一部のパーツは補修時に取り換えられている可能性が高いが、オリジナルと思えるブリッジなどはきれいに面取りもされている美しいムーブだ。Cal.72Cはクロノグラフリセット用ハンマーが引きあがった状態で、リセット時に押し込むタイプである。(ボタンを戻すとハンマーも戻る。) ちなみに多くのムーブ、Venus175もel-primeroも、はリセット後はハンマーはカムを叩いた状態で止まっている。機械式クロノグラフのムーブメントの違いがよくわかるひとつは、リセット時の感触だと思う。バルジュー72Cの場合はやや力強い押し込みが特徴だ。あとトリプリカレンダとはいえ、月表示は自動的には動かない。月一回10時位置のプッシュボタンで送ってやる必要がある。また曜日を送る機構がないので、リューズで何日分か針を回してやる必要がある。しばらく使っていないと合わせるのが結構めんどうくさい。ある資料には、ボタンの深押しで曜日も送れるように書かれているものもあるが、仙人のものは曜日は送れない。
バルジューについて改めて説明することは他の詳しいサイト(たとえばここ)に譲るが、第一回のヴィーナスと双璧をなす、高級クロノグラフの中心となるエボーシュである。バルジューはレイモンド兄弟により設立され、ムーブメントの刻印には頭文字の「R」が使われている。(ETAに吸収後は「VAL」) Cal.22、Cal.23でその地位を築き、一つの完成系と言っていいのがCal.72ではないだろうか。Cal.72Cはそのトリプルカレンダ付き、Cal.88はさらにムーンフェイズ付きのモデルである。Cal.72/72Cはロレックスやパテックフィリップなどのハイクラスの時計にも供給された名機である。その後のヴィーナス社からの流れをくむvenus188-valjoux7730-ETA7750への変遷は、またの機会に書きたい。
ちなみにミネルバにはなかなか渋いCal.20という自社ムーブメントがある。が、残念ながら所有していない。このCal.20は漫画「ギャラリーフェイク」の29巻にも取り上げられている。いつか手に入れたい一本である。
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